PMBOK 7th勉強会、始動。
こんにちは!
Synamonでエンジニアリングマネージャーをしている佐藤(@unsoluble_sugar)です!
先日、本テックブログでアナウンスしたとおり、社内のエンジニア有志メンバーが集まり「PMBOK 第7版」の勉強会を開催することになりました。
2021年8月の出版時点では日本語訳版が出ておらず、英語版を訳しながら読み進めていく形となったため、Section区切りで何回かに分けて継続開催していきます。
PMBOKとは
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、PMI(Project Management Institute)がプロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系化してまとめた本です。
1996年の初版出版以来、4年に1度くらいの頻度で改訂が繰り返されており、2021年8月に第7版が出版されました。
本書は『The Standard for Project Management』と『PMBOK Guide』の2部で構成されています。今回は1発目ということで『The Standard for Project Management』の序章〜Section 1まで内容を翻訳。
本記事では概要の抜粋と、勉強会を開催してみて感じた課題について書き記していきます。
序章
1987年にホワイトペーパーが発表されてから、PMBOKは進化し続けてきました。改訂の間に世界的な変化が起きています。
- 古い組織や技術が消えていく一方で、新しい組織が生まれ、技術も進化している
- 過去10年だけでもあらゆる製品、サービス、ソリューションへのソフトウェア導入が急激に進んでいる
- 様々な変化は起きているものの、基本的な概念や構造は変わっていない
- 一人で考えるよりも集団で考えたほうが包括的な解決策が得られる
- 組織はプロジェクトという手段を使い結果やアウトプットを提供する
PMI関係者によるフィードバック
PMIは世界中のステークホルダーのフィードバックを取り入れ、PMBOKをより現実的なものにしています。世界各地で開催されたワークショップのフィードバックをまとめると、大きく4つのポイントが強調されました。
① 信頼性と関連性の維持・強化
② 読みやすさ、使いやすさの向上させる一方で、新しいコンテンツを詰め込みすぎないこと
③ ステークホルダーのニーズを察知し、実践的な補足コンテンツを提供する
④ 過去の版の内容には継続的な価値があり、その価値を否定することなくシフトすることでより強化される
これらに適応するため、PMBOKはプロセスベースからプリンシプル(原則)ベースに変わり、成果物よりも価値をもたらす結果に焦点をあてる形になってきました。
- 予測型から適応型アプローチへ
- 組織の戦略、価値、ビジネス目標の推進に結びつける「バリューチェーン(価値連鎖)」に焦点を当てる視点に変わった
- アウトプットよりもアウトカム重視
第6版からの追加項目
第6版と比較すると全体の構成が再編されていますが、新たに追加された項目としては以下のとおりです。
- The Standard for Project Management
- 価値提供システム
- プロジェクトマネジメント原則
- PMBOK Guide
- チーム、開発アプローチとライフサイクル、プロジェクトワーク、デリバリー、不確実性
- テーラリング
- モデル、メソッド、成果物
- PMIstandards+
PMIstandards+は、プロジェクトマネジメントの継続的な進化をサポートするデジタルプラットフォームです。
『The Standard for Project Management』と『PMBOK Guide』を補完する情報も見れるということで、本書と合わせてチェックしてみるのが良さそうです。
Section1
『The Standard for Project Management』は、プロジェクトマネジメントを理解し、どのようにして意図した成果を実現するのかという基礎を提供するものです。
本記事では、主な用語と解説のみピックアップします。
主な用語と解説
アウトカム
プロセスやプロジェクトの最終的な成果、結果。アウトプットや成果物も含まれるが、より広い意味でプロジェクトがもたらす利益や価値に焦点を当てている。
ポートフォリオ
戦略的目標を達成するために、グループとして管理されるプロジェクト、プログラム、およびオペレーション。
プロダクト
生産され、定量化可能な成果物。それ自体が最終的に提供されるものである場合や、成果物を構成するものの一部である場合もある。
プログラム
関連プロジェクト、補助的なプログラム、プログラム活動の集合体。個別に管理した場合には得られない利益を得るために、バランスを保って管理される。
プロジェクト
独自のプロダクト、サービス、または結果を生み出すために行われる一時的な試み。プロジェクト作業そのもの、またはプロジェクト作業フェーズの開始と終了を示す。単独で行われることもあれば、プログラムやポートフォリオの一部として行われることもある。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトの要件を満たすために、知識、スキル、ツール、およびテクニックをプロジェクト活動に適用すること。意図した成果を実現するためにプロジェクト作業を指導すること。プロジェクトチームは、幅広いアプローチ(予測型、ハイブリッド型、適応型など)を用いて成果を達成することができる。
プロジェクトマネージャー
プロジェクト目標の達成に責任を持つプロジェクトチームを率いるために実行組織から任命された人物。成果を達成するためにプロジェクトチームの作業を促進し、意図した成果を実現するためのプロセスを管理するなど、さまざまな役割を果たす。
プロジェクトチーム
プロジェクトの目的を達成するために、プロジェクトの作業を行う個人の集合体。
価値提供のためのシステム
組織を構築、維持、発展させることを目的とした戦略的な事業活動の集合体。ポートフォリオ、プログラム、プロジェクト、プロダクト、オペレーションのすべてが、組織の価値提供システムの一部といえる。
価値
絶対的な価値、重要性、または有用性のこと。ステークホルダーによって価値の捉え方は異なる。顧客は製品の特定の機能や特徴を利用できることを価値と定義することができる。組織は利益からその利益を達成するためのコストを差し引いたものなど、財務的な指標で判断される事業価値に焦点を当てることができる。社会的価値とは、人々の集団、地域社会、環境への貢献を含むものである。
その他
『The Standard for Project Management』で使用されるその他の用語については Lexicon of Terms | Project Management Institute を参照。
勉強会では、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトの関係性が曖昧なメンバーも居たため、理解を補足するための参考記事を貼っておきます。
Section2でもこのあたりの話が出てきますが、後述するPMBOK第6版の図解解説本にもわかりやすい説明が載っていたので、そちらも参考になるかと思います。
勉強会を実施してみて感じた課題
今回の勉強会は参加者5名、1時間枠で開催。第1回の実施を終えた上で、以下のような課題があがりました。
課題
- Section1まで読んでおく前提だったが、手を付けられていないメンバーも居た
- 用語の解釈が難しい場合がある
- とりあえずやってみる精神で始めたものの、良い感じの進め方ができなかった
- 全文を読み回ししていると時間が足りない
- その場で翻訳するのはしんどい
- 英語スキルの度合いによって翻訳に時間がかかる
- 翻訳に注力してしまい肝心の内容について議論する時間が薄かった
- 隔週開催ではペース配分のバラツキや継続性が失われる懸念あり
対策
- 事前に次Section分を読んでおくこと
- 各自で内容を掻い摘んで要約してくる
- 勉強会では要約内容を示し合わせ、議論にフォーカスする
- 隔週開催ではなく毎週開催に
- 勉強会(読書会)の進め方について知見収集する
実施方法にも改善の余地あり
勉強会の実施方法も少し考えた方が良さそうだと感じました。
今回はoViceで通話しながら、Scrapboxを画面共有で映しつつ概要を箇条書きしていましたが、各自の要約内容を照らし合わせるのであれば、miroのボードを使う形式の方が適しているかもしれません。
以後の勉強会では、より最適な手法を模索していければと思います。
やっていくぞ
今回は『The Standard for Project Management』の序章〜Section 1までということで、第6版から第7版への変更点概要や、本書で使われる用語の定義が確認できた程度でした。
とはいえ個人的にPM経験はあるものの、これまでPMBOKは未履修だったため、本書に触れる機会が得られて良かったです。
第7版は引き続き読むとして、第6版の内容を補完するため日本語解説書をポチってみました。土台を固めて挑んでいく構えです(キリッ
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次回はSection2以後の様子をお届け予定です!
お楽しみに!
追記:Section2の記事出ました!